自分の老後の生活を見据えて、どんなふうに最期を迎えたいのかを示すために、また自分がある日突然いなくなることを考え、遺された家族に道しるべを示すために、エンディングノート(別名:もしもノート)というものがあります。
2011年に公開されたドキュメンタリー映画「エンディングノート」によって認知度が高まったことで、より多くの方がエンディングノートについて、そして終活について、意識しだしたのではないかと想定されます。
そこで今回は、生前整理・遺品整理についても非常に関係の深いエンディングノートについて、まとめていきたいと思います。
終活で使うエンディングノートとは?
エンディングノートとは、家族や親しい友人に向けて、自分が事故や病気等で意思疎通が取れなくなった時の様々な判断や、自分の死後の弔い方について、自分の意思で書き残すものをいいます。
例えば、財布の中に入れている方が多い、臓器提供についての意思表示カードがありますよね?エンディングノートの目的としては、その臓器提供の意思表示カードに近しいものがあります。
大きな枠組みでは生前整理の範疇に入り、物事の判断が冷静にできる健康なうちに、自らの老後や死に関することを、きちんと文字にして残しておく役割を持ちます。
エンディングノートと遺言書との違い
遺言書は、しっかりと法的な効力があるものを遺すなら、司法書士など専門家の協力のもとで作成する必要があります。
(自分なりに遺言書を書いてもいいのですが、曖昧表現があると効果を発揮しなかったり、自宅で紛失してしまうおそれがあります。)
そんな遺言書は、主に遺産に関して特筆されるケースが多いです。財産分与についてなど、法的に極めて重要な事項も含まれるため、司法書士や弁護士に任せ、文面を作成してもらうことが安心なのです。
一方、エンディングノートは正式な遺言書のような法的な効力は持っていません。
あくまでエンディングノートは、
- 死の直前、自分はこういう風に過ごしたい
- 自分が死んだら、こういう段取りをしてほしい
という”希望”を遺された方に伝える手段であり、それと同時に自分の老後や死についてしっかりと考える機会を作るためのアイテムでもあるのです。
エンディングノートをつけるのは、シニア層や1人取り残される家族を持つ方が多い
終活の一環として、エンディングノートをつけられるのは、シニア層や「急に1人で取り残されたら大変だろうな……」と思う家族がいる方が多いです。
以下で詳しく、見ていきましょう。
自分の最期をイメージできるようになるシニア層
「エンディングノートをつけようかな……」と考えられる方は、やはり若年層よりもシニア層の方が多いです。
医学の発展した現代、お年を召されていてもまだまだ健康な方は数多くいらっしゃいますが、どんなに元気でも、命には限りがあることを受け止められるようになってくるのが、このシニア世代です。
「あと10年生きるのは、無理かもしれないなぁ」とふと考えた時に、誰に頼ればいいのか、持っている不動産や土地はどうしようか、どんな手続きを行う必要があるのか、などといったことを自分の中でまずは明確にするためにも、エンディングノートをつけ始められるのです。
そのため、エンディングノートは一気に書き上げるものではなく、必要な情報を照会しながら、自分の気持ちをじっくり見直して、ゆっくりと書き上げていくべきです。
突然自分がいなくなったら、家族が1人取り残される方
シニア層に限らず、”自分が突然いなくなった時に、1人で困る誰かがいる”というパターンでも、エンディングノートをつけられるケースが多いです。
例えば、子どもが独り立ちして遠くの地方へ引っ越してしまい、2人暮らしになったご夫婦などです。
一般的には、まだシニアと呼べる年代ではないと思いますが、もしもご夫婦どちらかに何かあった場合、残された方が、段取りに動き出さなくてはいけません。
独り立ちした子どもも心配して来てくれると思いますが、まず直ぐに動かなくてはいけないのは、やはりいつも一緒にいるご夫婦のどちらかとなります。
- だれに、どこに、連絡すればいいんだっけ?
- ○○の証明書はどこにあるんだっけ?
などと、不測の事態ではバタバタしがちです。
このように、2人暮らしのご夫婦のどちらかに何かあった場合でも、落ち着いて段取りができるよう、ご夫婦双方がご健在のうちに、話し合って双方のエンディングノートをまとめておくのです。
終活用エンディングノートはAmazonなど様々な場所で入手可能
※Amazonよりスクリーンショット
「エンディングノートはどこに売っているのか?」という疑問ですが、大型の文房具店やAmazonなどの通販ショップで気軽に買えるとお応えできます。
特にコクヨが販売しているエンディングノートは人気が高いです。
エンディングノートにどんなことを書けばいいのか分からない人でも、悩むことなく書けるように、「資産について」「家族・親族について」「医療・介護について」「葬儀・お墓について」など細かく項目を分けてあることがポイントです。
エンディングノートに決まった書き方はないので、普通のノートやWordでもOK
先ほどの項目では、テンプレートの入ったエンディングノートが販売されていて、とても便利なことを述べました。
しかし、エンディングノートの書き方自体に決まったものはないので、自分の書きたいことをきっちり書くということなら、別に普通のノートであっても構わないのです。
むしろ、”ノートに直筆”ということにこだわらなくてもOKです。ペン字は疲れるので、キーボードで打つ方がいいという方も、中にはいらっしゃるでしょう。
実は、Microsoft Officeでは、エンディングノートを記すためのテンプレートが無料で配布されています。手書きは苦手だという方は、有効活用してみましょう!
→ Microsoft Office「エンディングノート」のテンプレート
スマホが普及した現在は、スマホからエンディングノートの執筆・編集ができるエンディングノートのアプリもあるようです。
エンディングノートの中身は変わりませんが、その形は多種多様になってきました。
エンディングノートに書くべき内容
ここでは、実際にエンディングノートに書くべき内容を例として挙げていきます。
もちろんここで挙げる以外にも、遺される家族や知人に伝えたいこと、何でもエンディングノートに書いてOKです。
遺言書にすることではないけど自分にとって大切なことがあるなら、きちんとエンディングノートに残しておきましょう。
- 個人情報
- 周りのこと
- 自分が死を迎えるまでの希望
- 自分が死を迎えてからの希望
“個人情報”でエンディングノートに書いておくべきこと
まずは自分の個人的な情報を、エンディングノートに記載しましょう。
- 自分の本籍地
- 運転免許証、保険証、パスポートなどの置き場所
- マイナンバー
- お金を預けている銀行の名前・口座番号
- 自動引き落とし(公共料金など)の情報
- 加入している保険の情報
- 所有している不動産の情報
- 借金の有無
- 携帯やスマホのID・パスワード
- 利用しているWebサイトのID・パスワード
など、個人情報について書いておいた方がいいことは山のようにあります。
一気に思いつくものではないでしょうし、正確な情報を調べて記していくと時間がかかりますので、インターネット等で見られるテンプレートを参考にしながら、少しずつ書いていくといいでしょう。
なお、エンディングノートは紛失する場合も十分にあり得ますので、例えば、エンディングノートの情報だけで預金が全て引き出せてしまうような書き方は避け、口座の暗証番号など極めて重要な事柄は、公証役場などが管理する正式な遺言書の方にまとめるようにしましょう。
“周りのこと”でエンディングノートに書いておくべきこと
エンディングノートには、自分のことだけではなく、これまでの自分の人生に深く関わってきた、かけがえのない知人・友人などについても書いておきます。
知人・友人の連絡先などをエンディングノートに記しておき、もしも自分に何かあったときに連絡するかどうか、自分の葬儀がある場合に連絡するかどうかなどの、意思表示を行います。
“死を迎えるまでの希望”についてエンディングノートに書いておくべきこと
人はある日突然、死を迎えるとは限りません。むしろ少しずつ、色んな事ができなくなって、緩やかに死を迎えると考えた方が自然です。
例えば、自分が病気になり、意識がなくなってしまったときに、どんな医療を行ってほしいのか。
また、もし入所介護が必要になった場合、どんな介護施設で晩年を過ごしたいと思っているのか。介護施設に入居するための費用をどのように捻出するのか。
上記のように、自分の老後から、死を迎えるまでのプランニングを、エンディングノートに記しておきます。
“死を迎えてからの希望”についてエンディングノートに書いておくべきこと
自分が死を迎えてから、遺された家族にどのような対応を取ってほしいのかという希望も、エンディングノートに書きます。
まず重要なのは、遺言書の有無やその形式です。遺言書の作成を依頼した専門家の事務所名・名前・連絡先などと一緒に書いておきます。
また、財産の分与についても、書けるなら書いた方がいいです。遺言書を別に作成している場合は、財産分与について遺言書の内容できっちり書いていると思うので、その内容と差異がないように気を付けましょう。
その他にも、お葬式の規模について、本当に親族だけでひっそりと行ってほしいのか、お世話になった方は全員呼んでほしいのかなど、意思表示を行います。
もしもペットを飼っている場合は、お世話を誰にお願いしたいかなども書いておきます。ただ、死後突然「飼ってほしい」と言われても、言われた方は困ってしまうので、お願いしたい人にあらかじめ確認を行う必要はあるかと思います。
生前整理・遺品整理において、エンディングノートがどう役立つのか?
ここまでお話ししてきたエンディングノートですが、書く方にとっても、遺してもらった方にとっても、大きなメリットがあります。
以下の項目では、エンディングノートが実際にどのように役立つのか、触れていきたいと思います。
生前整理を順序良く行える
“エンディングノートを書こうとする”この段階ですでに、エンディングノートを書く人にとってのメリットが発生しています。
いざ、漠然と生前整理を行おうと思っても、何から手をつけていいのか分からない人が多いでしょう。
しかし、エンディングノートを書くことになれば、遺された家族にとってどんな情報・手続きが必要なのか、そのために何をすればいいのか、順序立てて調べることができます。
例えば「もしも自分が介護施設に入ることになった場合、不動産は売って、その費用を入居費用にあてたい」ということをあらかじめ決めておけば、もしもその時になって自分に判断能力がなくなっていたとしても、手続きを行う家族が、希望通りに取り計らってくれます。
遺品整理で残しておいてほしい物が分かりやすくなる
遺品整理について故人から何も指示がない場合、キレイでまだ使えそうな物や、思い出がある物を、遺された家族が判断して、遺すことになります。
ただ、遺された家族が気付かないだけで、故人にとっては大切で遺してほしい物もあるのかもしれません。
そこでエンディングノートで、大事にしていたから残しておいてほしい物や、業者に頼む前に先に片付けてほしい物について指示しておけば、より遺品整理を進めやすくなります。
エンディングノートを使った終活は、自分と家族のためにある
以上、エンディングノートについてのお話でした。
エンディングノートを書くことを含めた、いわゆる”終活”は、主に遺された家族の負担を減らすためにあります。
遺品整理の際、大事な契約書類がどこにあるのか分かっているだけでも、遺族はとても助かるのです。
また、エンディングノートを書き始めることは、自分の老後の生活をしっかりと考えるいい機会にもなります。
エンディングノートは1人で書くよりも、ご夫婦やご家族で協力して書く方がよく、「いざというときは○○さんに連絡しないといけないね」と話し合って決めましょう。
自分の最期をプランニングすることは、晩年のセルフネグレクト(家をゴミ屋敷にしてしまう等)の防止にも繋がります。
エンディングノートは、人間が穏やかな最期を迎えるための、大切な準備なのです。
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