「生前整理」とは自身が心身ともに健康な状態のうちに、残された遺族が困らないよう、持ち物や財産などの身辺を整理しておくことをいいます。
「死を迎える準備」というよりは「人生の棚卸し」や「安心して日々を過ごすための保険」として、50から60代の方はもちろん、最近では20代や30代で生前整理を始める方も増えてきています。
この記事では誰でも手軽に着手できる「生前整理」の具体的なやり方について、わかりやすく6つの項目で解説いたします。
この記事でわかること
・「生前整理」の内容とやり方
・「生前整理」に取り組む意味(メリット)
・「生前整理」を始めるべき年齢
生前整理をおこなう意味とは?なぜ注目されているのか
なぜ今、これほどまでに「生前整理」への早期取り組みが注目されているのでしょうか。
生前整理は残された遺族の負担を軽減するだけでなく、自身にとっても今後の人生を明るく快適にできるという点で、大きな意味(メリット)があります。
生前整理をするメリット | |
自分 | ・自分の半生を振り返るきっかけとなる。 ・死後の不安が和らぐ。 ・身辺を整えることで、生活環境が快適になる。 ・大切な家族や友人へ、感謝の気持ちを再確認できる。 |
遺族 | ・相続関係のトラブルを防ぐ。 ・財産管理や葬式など、遺族の負担を軽減する。 ・資産をきちんと継承できる。 |
例えば、生前整理の一環として身の回りの不用品を処分することは、現在の住まい環境を整え、気持ちの良い毎日を送ることにも繋がります。
またあまり考えたくはありませんが、急な交通事故や大病など、ある日突然命を落としたり意思疎通ができなくなったりするリスクを、私たちは常に抱えながら生きています。
例えば「AYA世代」と呼ばれる、15~39歳の思春期・若年成人層でも「がん」を発症するリスクがあり、日本では毎年約2万人のAYA世代の方ががんの診断を受けています。
参考:AYA世代(15歳~39歳)のがんについて|がん情報みやぎ
万一のトラブル時も残された家族を困らせることなく、自身の思いや意思を伝達するためにも、「身辺整理」や「遺書の作成」など、早期から「生前整理」に着手しておくことが大切です。
生前整理のやり方&6つの項目
「生前整理」の全体像を把握することで、いざ整理をするとなった場面でも、スムーズに行動へ着手することができるでしょう。
早期に知っておきたい、生前整理の具体的なやり方と6つの項目についてご紹介します。
- 日用品や家具などの身辺整理
- 財産目録の作成
- デジタル情報の整理
- エンディングノートの作成
- 生前遺書の作成
- 遺言書の作成
1.日用品や家具などの身辺整理
生前整理ですべき内容の1つ目は、あなたの身の回りにある日用品や家具といった「形あるもの」を整理することです。
「もの」を整理する際は、以下の2点を意識して取り組むのがおすすめです。
- 必要なもの・不要なものを分ける
- 貴重品は1か所へまとめる
a.必要なもの・不要なものを分ける
所持しているものを「必要か」「不要か」で分類し、不要なものは早いタイミングで処分もしくは業者へ買取を依頼するなど対策を打ちましょう。
長年蓄積された「何となく家にある物」を処分することは、残された遺族の負担を軽減するだけでなく、自身の生活を軽やかにする上でも大きな意味を持ちます。
必要なもの(残す)一例 | 不要なもの(処分する)一例 |
・日常的に使用しているもの ・所持していて心が弾む、ワクワクするもの ・価値が高い or 将来的に価値がつきそうなもの ・思い出の品 ・死後、遺族に遺したいもの |
・何年も使用していない、忘れていたもの ・なんとなく残しているもの、記念品など ・大量生産品など希少価値のないもの ・いまお金に換えたほうがよさそうなもの ・容量がかさばる等、遺族に迷惑をかけそうなもの |
要不要の判断は一度やって終わりではなく、半年や1年おきなど定期的に見直しの機会を設けると良いでしょう。
「不用品」をどうするか
整理の結果「必要ない」と分類されたものは、それぞれ最適な方法で早めに手放しましょう。考えられる手段として「誰かに譲る」「売却する」「処分する」の3つが考えられます。
売却時は古物商業者やリサイクルショップといった「出張買取」可能な業者へ依頼すると、物を運ぶ労力や手間を軽減できます。インターネットの扱いに抵抗がなければ、ネットオークションやフリマアプリを検討するのも良いでしょう。
「処分」を検討する場合も、不用品やゴミの回収と並行して「買取」をおこなってくれる「生前整理」や「不用品回収」の専門業者へ、相談してみるのがオススメです。
【おすすめ記事】遺品の買取業者/高価買取できる遺品の料金相場は?
b.貴重品や書類は1か所へまとめる
保険証や銀行通帳・印鑑といった貴重品類・契約書などの書類は、普段から持ち歩く物を除き、1か所にまとめて管理するようにしましょう。
貴重品・書類の場所を明確にしておくことで、いざという時も貴重品の場所探しや対処へ困ることなく、自身やご家族がスムーズに手続きを済ませられるためです。
まとめておくべき貴重品・書類としては、以下のようなものが挙げられます。
- 通帳・カード
- 印鑑(実印、銀行印)
- 身分証明書(運転免許証・保険証など)
- 年金手帳
- 株式や債券、金融資産に関する書類
- 貴金属や宝石
- 保険関係の書類(生命保険・損害保険など)
- 土地の権利所、不動産関連の契約書
- 公共料金に関する書類
- 各種契約書類(賃貸・インターネット・電話など)
- 債務・ローンの契約書類
- 自宅や金庫などの鍵
2. 財産目録の作成
生前整理ですべき2つ目の内容は「財産目録」を作成しておくことです。
財産目録とは、保有するすべての資産(土地、建物、現金、預金等)とすべての負債(借入金等)について、その詳細を一覧にまとめたものを指します。相続税の支払いや遺産分割の際などに、残された遺族が対処しやすいよう、財産目録を作っておくことはとても重要です。
資産(プラスの財産)の例 |
・不動産(自宅、貸家、店舗、宅地、農地、貸地など) ・金融資産 (現金、預貯金、株式や債券等有価証券、投資信託など) ・家庭用財産 (家具、家庭用品など) ・その他(自動車、貴金属、骨とう品、生命保険に関する権利、著作権など) |
負債(マイナスの財産)の例 |
・借入金(住宅、自動車、カードローンなど) ・連帯債務 ・滞納している税金 |
目録には相続財産の名称だけでなく、財産の種類や数量・所在や価額といった情報まで細かく記載しましょう。
3.デジタル情報の整理
生前整理ですべき3つ目の内容は「デジタルの情報を整理しておく」ことです。
パソコンやスマートフォンが普及した昨今では、銀行口座やクレジットカードの情報・個人の連絡先といった重要な情報を、すべてデジタルで管理される方が少なくありません。
このデジタルの情報を把握するためには故人のパソコンやスマートフォンへアクセスする必要がありますが、パスワード等アクセス方法の共有が不十分な場合、遺族は情報を開示できず、大切な資産やデータをデジタル上に放置してしまうことになってしまいます。
こういったトラブルを防ぐため、生前にデジタル情報の整理や家族への共有をしておくことは非常に重要です。
整理すべきデジタル情報の例 |
・PC、スマートフォンの暗証番号 or パスワード ・金融機関口座・クレジットカードの詳細と暗証番号 ・仮想通貨やスマホ決済サービスの情報 ・ネット証券やFXなどのアカウント情報 ・有料サービスのアカウント情報 ・SNSアカウントのログイン情報 など |
大切な資産や個人情報を遺族へ引き継ぐためにも、デジタルで管理している遺品の存在とそのアクセス方法・パソコンやスマートフォンのログインパスワードを共有しておくことが重要です。
「生前にはどうしても資産やパスワードに関して共有したくない」という方は、次に紹介する「エンディングノート」にて、その詳細を伝えると良いでしょう。
4.エンディングノートの作成
生前整理ですべき4つ目の内容は「エンディングノート」の作成です。
エンディングノートとは、自分が亡くなった時や事故・病気等で意思疎通が取れなくなった時のため、所有財産や死後の弔い方などについて、自分の意思を書き残すノートのことを指します。
判断能力が確かなうちにエンディングノートを作ることは、大切な家族や友人へ思いや感謝を伝えるだけでなく、残された遺族が困らない様に指針を示す上でも重要です。
エンディングノートに記載すべき内容としては、以下のようなものが挙げられます。
- 自分の本籍地
- 運転免許証、保険証、パスポートなどの置き場所
- マイナンバー
- お金を預けている銀行の名前・口座番号(ネットの場合はIDとパスワードも)
- 自動引き落とし(公共料金など)の情報
- 加入している保険の情報
- 所有している不動産の情報
- 借金の有無
- お墓やお寺についての希望・詳細
- 携帯やスマホを見るためのID・パスワード(ロック解除のため)
- facebookやTwitterなどのSNSのログイン情報
- お友達の連絡先の一覧表(死亡したときに伝えられるように)
- お金・資産が発生するその他の情報(株やFXなど)
- 家族や友人へのメッセージ
最近では20代や30代といった若い世代でも、自分の将来を見据え「エンディングノート」をつける方が増えてきています。
「どんな項目について書けばいいかわからない」という方は、文房具店や書店・Amazonなどの通販ショップで販売されている、市販の「エンディングノート」を利用してみるのも良いでしょう。
エンディングノートについてのより詳しい内容は、以下の記事にまとめています。
【おすすめ記事】エンディングノートは終活の鍵 | 生前整理・遺品整理のために書く内容と役立て方を紹介
5.生前遺書の作成
生前整理ですべき5つ目の内容は「生前遺書」の作成です。
生前遺書とは、自身の判断や意思表面が困難となる不測の事態(認知症・植物状態・意識不明など)に備えて、あらかじめ医療やケアに関する希望を文書に残しておくという方法です。
遺言書やエンディングノートが基本的に死後のことを記載するのに対し、生前遺書では生前(亡くなるまでの期間)の意思決定を示すという違いがあります。
将来の医療・ケアについて指示を残しておくことは、代理を任されるご家族の負担を軽減する上で重要な役割を果たします。
6.遺言書の作成
生前整理ですべき6つ目の内容は「遺言書」の作成です。
遺言書とは、主に「財産」に関する希望について記述する、法的効力をもった書類のことです。
簡単に説明すると
- そもそも相続人は誰か
- 相続対象となる財産にどういったものがあるか
- 誰に、どの財産を、どの程度の割合で継承させるのか
といった項目を検討しながら、遺言書の作成を進めることとなります。
遺言書は基本的に自由なフォーマットで作成できますが、書き方を誤ると法的効力が認められないケースもあります。心配な場合は、弁護士や司法書士・行政書士といった、法律のプロに相談して作成すると良いでしょう。
また、公証人(裁判官や検察官等の法曹経験がある弁護士など)に遺言を聞き取ってもらい、書面を作成してもらう「公正証書遺言」という方法もあります。作成には費用と手間がかかりますが、遺言書としての有効性が高く、書き漏れや不備の懸念も回避できるといったメリットがあります。
以上、生前整理の具体的なやり方と6つの項目について解説いたしました。
- 身の回りの日用品や家具などの整理整頓
- 財産目録の作成
- デジタル情報の整理
- エンディングノートの作成
- 生前遺書の作成
- 遺言書の作成
自身が手を付けやすいと感じた項目から、まずは1つずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
生前整理は何歳から始めるべき?20代・30代は若すぎる?
生前整理をはじめるべき年齢ですが、結論からお伝えすると年齢を問わず「人生の整理整頓をしたい」と思ったその瞬間から、少しずつ始めてみるのがおすすめです。
今回「生前整理」の内容としてご紹介した
- 身の回りの物品の整理
- 財産目録の作成
- デジタル情報の管理
といった作業は、遺族のためだけでなく自分自身にとっても、現状を把握し要不要の取捨選択をする機会として大いに価値があるといえます。
またエンディングノートを書くことで、改めて家族や友人といった大切な人への思いや感謝を確認することができます。「遺言書はさすがに早いかも……」という方も、15歳以上であれば、法的に有効な遺言を残すことが可能です。
いざという時の瞬間に備えて、また自身の人生を振り返るきっかけとしても、できることからコツコツと「生前整理」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
大掛かりな生前整理は、プロに相談するのもおすすめ
「生前整理の重要さは理解したものの、工程が多く重い腰があがらない」という方は、短期で効率のよい生前整理をサポートする、プロの「生前整理業者」に依頼してみても良いでしょう。
- 家庭にある物品の仕分け・処分・買取
- ゴミの回収・廃棄
- 部屋の清掃
- 財産の相続対策
- エンディングノート作成のサポート
といった生前整理に必要な作業を、知識豊富な専門家が1から丁寧に実施・サポートします。
まとめ
「生前整理」のやり方、実施するメリットについて解説しました。
生前整理は自身の死や老後と向き合い、大切な家族の負担を軽減するため、そして自身の意思確認をするための “価値のある前向きな行動” といえます。
ぜひ年齢を問わず心身ともに健康なうちから、生前整理にチャレンジしてみましょう。
また関西圏での「生前整理」についてプロに相談したい方は、安くて安心・知識豊富な「アーチグリーン」までお気軽にご連絡ください。