【原状回復とは?】現状回復との違いは?特殊清掃や遺品整理による退去時の原状回復について

賃貸契約などにおける「原状回復」とは、部屋を借りた時のきれいな状態(持ち込んだ物や設備がすべて撤去され、入居者の過失による損傷がない状態)に回復させてから、家主に引き渡すことをいいます。

原状回復に求められるレベルや対処法は、建物の種類や賃貸借契約の内容・退去時の部屋の状態によって大きく異なります。

この記事では、はじめに「原状回復」の具体的な内容「現状回復」との違いについて説明します。

次に、これからの人生のために知っておきたい

  1. 一般的な賃貸を退去するとき
  2. 公共住宅を退去するとき
  3. 孤独死など、人が亡くなった賃貸の契約を解除するとき(特殊清掃)
  4. 親や親族などが亡くなった後、住んでいた賃貸を解約するとき(遺品整理)

といった4つのケースに関して、それぞれに求められる原状回復のレベルや対処法について解説いたします。

目次

賃貸等における「原状回復」の意味とは?

アパートなど賃貸契約における「原状回復」とは、借主が部屋を退去する際、本来あるべき元の状態に部屋を戻してから家主に引き渡すことを指します。

賃貸借契約の終了時、借主が部屋の原状回復義務を負うことに関しては、2020年に改正された民法にて定められています。

【改正民法621条】(賃借人の原状回復義務)

 

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた 賃借物の損耗並びに賃借物の経年の変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合に おいて、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用元:第3回 賃貸借契約に関する改正のポイント(3)賃借人の原状回復義務/敷金に関するルール

例を挙げると

  • 室内の喫煙で変色してしまった壁や天井
  • 床にこぼした飲み物のシミやカビ
  • 家具の移動や引越しで生じた、フローリングのキズやヘコミ

といった借主の不注意や手入れ不足が原因で発生した部屋の損傷は、すべて原状回復の対象となります。

通常、借主が自ら原状回復工事を依頼するケースは少なく、あらかじめ家主に預けている「敷金」から必要な分を補填され、足りなければ追加で原状回復費用を請求される場合が大半です。

 

原状回復と現状回復との違い

原状回復と混同されがちな「現状回復」ですが、そもそもが誤表記であり、現状回復という単語は本来存在しません。

原状 元々の状態・以前のあり様のこと。
現状 いま現在の状態のこと。

とくに賃貸借契約における内容であれば、基本的に「原状回復」という表記を選べば、間違いないと思っていただいて問題ありません。

 

賃貸の退去時、求められる「原状回復」のレベルとは?

まず賃貸を退去する際に「原状回復」を求められるケースですが、部屋の損耗(そんもう)のうち、借主の故意や過失によって、通常の使用レベルを越えて損傷している場合のみ、回復義務が発生します。

「原状回復」の要不要 損耗の程度
不要 建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年劣化)
不要 賃借人の通常の使用により生ずる損耗(通常損耗)
必要 賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗

参考元:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について│国土交通省

つまり、普段の生活をおくっていれば “当たり前に発生するであろう部屋の劣化や汚れ” に関して、借主側が原状回復をする必要はないということです。

例えば

  • フローリングや畳・壁の自然な色褪せ(いろあせ)
  • 長年、家具家電を置いたことによる床のヘコミ
  • 下地ボードの張り替えがいらない程度の、ピンや画鋲の穴

などの項目は、民法においての「経年劣化」および「通常損耗」に該当するため、借主ではなく貸主が原状回復の義務を負うことになります。

 

自然な日焼け・電気ヤケは問題ないが、借主の手入れ不足によるシミや汚れはNG

「どのレベルまでの原状回復を借主に求めるか」は、正直なところ賃貸借契約の内容や賃主によって大きく異なります。

「借主と賃主のどちらが回復義務を負うか」の線引きは難しいですが、基本的な考え方としては「借主側に落ち度のある消耗(基礎的な清掃を怠る・雑な扱いをする等)」は、すべて原状回復費を負担する可能性が高いと考えられます。

例えば、同じ「フローリングの退色」であっても、経年劣化による自然な症状であれば「貸主」が、飲み物の拭き忘れ・戸の閉め忘れなど、借主側に落ち度があれば「貸主」が、原状回復の義務を負うことになります。

【借主側に原状回復義務が発生する例】

  • フローリングや畳の色あせ(借主の不注意による場合)
  • 風呂やトイレなど水回りのカビ・水あか(普段の手入れを怠ってため、除去できないもの)
  • 台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、油や汚れが付着している場合)
  • 壁や床のカビ・シミ(雨の拭き込みや結露を放置したことで発生したもの)
  • 壁の劣化・腐食(エアコンからの水漏れを放置したことで発生したもの)
  • 戸建て賃貸住宅にある庭の雑草(定期的な草刈りを怠ったことが原因のもの)

また「エアコンを持ち込み自ら設置した」「入居中に購入したウォシュレットを後付けした」など、入居後に設備を加えた場合も、基本的には退去時にすべて撤去し、元通りにする必要があります。

 

「一般的な賃貸」と「公営住宅(市営・県営など)」との、原状回復の違い

公営住宅

ここまで、賃貸住宅全般に当てはまる「原状回復」についてお話ししましたが、実はいわゆる「一般的な賃貸」と「公営の賃貸住宅」とでは、原状回復に求められる内容は大きく異なります。

というのも、地方自治体が運営する市営・県営などの「公営住宅」では

  • 部屋ごとにオーナーが異なるため、賃貸借契約のルールが建物内でバラバラである
  • 何十年も住んでいる部屋などは、賃貸借契約そのものの記録が無い or 所在が不明
  • そもそもオーナーの問い合わせ先がわからない

といったケースも多く、借主側がどの範囲まで原状回復の義務を負うのか、特定すること自体がそもそも難しいためです。

例えば、同じ大阪市営○○住宅A棟の「701号室」と「702号室」であっても、公営住宅では管理するオーナーが異なる可能性があります。このとき、2部屋の原状回復のルールは異なるため「701号室の入居者が702号室の入居者の賃貸借契約を参考にする」ということは実質不可能です。

 

また公営住宅には古い物件も多く、中には現在60歳の方が、20代のころから住み続けているというようなケースも少なくありません。

そうなると賃貸借契約を交わしてから40年近くも月日が経っているため

  • 借主が契約書類を紛失しており、原状回復の内容がわからない
  • 契約当時とオーナーが変わっており、オーナーと連絡がつかない
  • 契約が昔すぎて、貸主側にも契約書類が残っていない

といった問題が往々にして発生することになります。

 

こういった「公営住宅の退去時、原状回復や退去のルールがわからず途方に暮れる」自体は

  • 公営住宅に住んでいた親が亡くなり、住まいを明け渡したいとき
  • 公営住宅に住んでいた親が施設へ入ることになり、住まいを明け渡したいとき

など、ご自身ではなく「ご両親や親族の賃貸退去時」に遭遇するケースが良く見受けられます。

 

またご家族の退去手続きを肩代わりする際、苦労するのが「そもそも部屋に備わっていた設備なのか・親が入居後に取り付けたのか」を判断することです。

先述のとおり、住んでいる期間が長く途中でオーナーが変わっている場合、入居時の設備記録が残っていないケースも多く、こうなると誰がどこまで原状回復の義務を負うかを正確に判断することことは、ほぼ現実的に不可能となります。

 

上記のような「公営住宅における各部屋の原状回復に関する相談・修繕依頼」に関しては、住居を管理している各自治体の「住宅管理センター」へ問い合わせる必要があります。

「親が住んでいた家の賃貸契約を解除する際、何から手を付ければいいかわからない」という事情に直面した場合、原状回復に幅広く知見をもつ「遺品整理・生前整理会社」に整理や清掃を依頼すれば、退去時の原状回復に関する悩みもあわせて相談することができるでしょう。

 

孤独死など「特殊清掃」が必要なケースの、原状回復のやり方

特殊清掃員

次に「退去時に『特殊清掃』が必要なケース」での原状回復について解説します。

特殊清掃とは、孤独死や自殺などが発生した「通常の清掃作業では対処できない現場」にて、清掃のプロが特殊な技術や薬剤を使用し対処する作業のことです。

仮に

  • 賃貸に一人で暮らしていた父親が「孤独死」で見つかった
  • 賃貸に一人で暮らしていた兄弟が「自殺」した

といったケースであれば、遺族に当たる子供さんやご家族・親戚の方が、特殊清掃業者に清掃作業を依頼し、入居時の状態まで回復させてから、賃貸契約を解除・退去しなければなりません。

 

特殊清掃をおこなうケースでは、どの状態まで回復が必要?

物件の管理会社様からのご依頼で、孤独死された方の遺品整理を行った事例

「特殊清掃が必要なケースの原状回復」に関して、個人(借主側)がどの範囲・レベルの回復作業まで責任を負うかどうかは、賃貸借契約の内容に基づきつつ、最終的には貸主さんと話し合いの上で決定するケースが一般的です。

というのも、軽度の汚れ・臭気であれば簡易的な清掃作業で事足りますが、遺体現場の場合はリフォームを伴うような、大掛かりな回復作業が必要なケースも少なくないためです。

例えば「死体から漏れ出た体液がフローリングを伝って下地へ浸透し、建物の基礎部分まで臭気物質が届いてしまった」という状況の場合

  • フローリングの張り替えまで、借主が義務を負う
  • フローリングを剥がした「下地」部分の撤去・張り替えまで、借主が義務を負う
  • 「下地」部分を剥がした「建物の基礎部分」の臭気作業まで、借主が義務を負う

といったパターンなどが考えられます。

 

基本的には「臭いと除去したタイミング」で貸主に立ち合いを依頼する

特殊清掃が必要なケースの場合、壁紙やフローリングの張り替え作業をおこなう前に、必ず「臭いの除去が完了したタイミング」で、一度貸主側へ立ち合いを依頼しましょう。

借主側の独断で壁紙やフローリングの張り替えまで済ませてしまうと

「死臭がまだ部屋に残っている場合、臭いの原因に直接対処するため、張った壁紙を再度はがして消臭作業をおこなわなければならないといったリスクを招く可能性があるためです。

また賃貸によっては特定の業者と提携しており、借主側が別の業者に張り替えやリフォーム作業を依頼すること自体、禁止しているケースも少なくありません。

 

風呂やトイレなど特殊な場所で遺体が発見された場合

黄ばんだ風呂

遺体現場の原状回復で、最も難しいとされるのが「遺体が浴室で発見された場合」です。

というのも、遺体の腐敗によって流れ出た体液や肉片が、誤って浴室の排水管に流れてしまった場合、近隣にまで迷惑をかけるような、ひどい異臭の要因となってしまうためです。

仮に体液や血液が配管へ流れてしまった場合、配管自体を交換することはできないため、機材による高圧洗浄と消毒液で完全に臭いの元を取り切る必要があります。

このとき

  • 体液や血液を排水管へ流してしまう
  • ひどい臭いが残った状態で、何日も浴室を放置する

などの誤った対処をしてしまうと、原状回復の難易度がさらに高まり、より高額な清掃費やリフォーム工事費を請求されてしまう可能性があります。

浴室で遺体が発見された場合は、できる限り早急に信頼できる特殊清掃業者へ、原状回復作業を依頼しましょう。

ちなみに「遺体がトイレで発見された場合」ですが、トイレは浴槽と違い「配管への流れが直通」になっており、異物が詰まりにくいため、浴室より楽に清掃・消臭作業をおこなうことが可能です。

余談ですが、難易度の高い「浴室の特殊清掃」に関して、信頼できる業者を見極めるコツがあります。

「風呂場で遺体が発見された場合、現場の水はどう処理しますか?」と質問した際「なるべく配管に流れない様、汲み取りで対処します」と回答した業者であれば、比較的信頼できるケースが多いです。

逆に「そのまま配管へ流します」と回答した業者は、特殊清掃に関して素人の可能性が高いため、依頼は控えた方が良いでしょう。

以上、特殊清掃が求められる場合の原状回復についてでした。基本的には「入居時の状態」まで回復ささせてから退去する必要があるため、「臭いの除去」を最優先に、実績のある専門業者へ早めに作業を依頼しましょう。

→ アーチグリーンでは、経験豊富なプロによる「特殊清掃作業」の相談を承っています。

 

「亡くなった親が住んでいた賃貸」の原状回復のやり方

遺品整理

先述した「公共住宅の原状回復」でも触れたように、年老いたご両親や親族が亡くなった後、住んでいた賃貸を引き払う際に必要となるのが「遺品整理」による原状回復作業です。

遺品整理とは、故人の部屋に残された遺品を要不要へと整理し、部屋をきれいな状態にする作業を指します。

また遺品整理には「部屋を片付ける」という目的の他、故人の大切な遺品や資産を見つけ出し、遺族が適切に対処・管理するといった意味合いもあります。

このとき求められる「原状回復」のレベルは、通常、個人が賃貸退去時に求められるものと同等です。

部屋の汚れや臭い・損傷具合が「通常損耗」や「経年劣化」の範囲にとどまるよう、速やかに以下の作業をおこないましょう。

【遺品整理を伴う原状回復の内容】

  • 遺品の整理(残すもの・捨てるのもの選別)
  • 貴重品や資産の把握・管理
  • 不用品の廃棄
  • 部屋の清掃・消臭作業

 

大掛かりな遺品整理が必要なら、業者への依頼がおすすめ

遺品ゴミの仕分け

「遺品が多すぎで、何から手を付けるべきかわからない」
「お通夜やお葬式など、様々な手続きで心が消耗しきっている」
「実家が遠方のため、遺品整理のために何度も足を運べない」

そんな方は、ご自身ですべての原状回復作業を負担せず、プロに遺品整理を依頼するのも1つの方法です。

大切な遺品や資産はしっかり残しながら

  • 遺品の要不要の選別
  • 印鑑や通帳・貴重品などの発掘・除菌
  • 不用品の回収・廃棄
  • 部屋中の清掃

といった労力のかかる一連の作業を、すべて遺品整理のプロに任せることが可能です。

また遺品整理業者によっては不用品の買取サービスもおこなっているため、遺品の中に買取可能なものがあれば、買い取り額を充当し作業費を安く抑えることができます。

親や親族の賃貸解約時、原状回復のための大規模な遺品整理なら専門業者に頼ってみてはいかがでしょうか。

→ 顧客満足度1位の「アーチグリーンの遺品整理サービス」について

 

まとめ

アパートの部屋

「原状回復とは」をテーマに、賃貸の退去時に求められる原状回復の内容や程度について

  • 一般的な賃貸住居の原状回復
  • 公共住宅の原状回復
  • 特殊清掃が必要なケースの原状回復
  • 親が亡くなった後、賃貸解約時の原状回復(遺品整理)

といった4つのケース別に確認しました。

退去時に大掛かりな原状回復費が請求されないよう、ご自身で賃貸を契約している方は、日頃からこまめな清掃や整理整頓を心がけましょう。

またご両親や親族が住んでいた賃貸の解約時には、原状回復に関する知見やノウハウを備えた「遺品整理業者」や「特殊清掃業者」といった、専門家への相談がおすすめです。

 

遺品整理・特殊清掃のプロ「アーチグリーン」では、不当な原状回復費が請求されないために、丁寧で速やかな清掃・片づけ・不用品回収などをサポートしております。

→ 関西圏の「原状回復作業」なら、遺品整理や片付けのプロ「アーチグリーン」まで

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