【孤独死の原因】一人暮らし高齢者の孤独死を防ぐには?/現状と対策
目次
セルフネグレクトとは?
セルフネグレクトとは、自分自身の心・身体のケアを放棄してしまうことです。
セルフネグレクトは直訳すると「自己放任」という意味になります。
身体の健康を維持することや、社会生活を送る上で必要な「身体の衛生管理」「住まいを清潔に保つこと」などを、放任・放棄してしまっていることがあげられます。
具体的な事例をあげますと、一人暮らしの高齢者などが、認知症やうつなどが原因で生活能力・生活意欲が低下し、極端に不衛生な環境で生活している、健康でいるために必要な栄養摂取ができていない等、客観的にみると本人の人権が侵害されているような状態のことを言います。
“ゴミ屋敷”や“孤立死(孤独死)”の原因でもある
セルフネグレクトになると、「生活を良くして行こう」という意欲が低下しているため「住環境の悪化」が起こりやすくなります。
生活に対する意欲が低下していると、ゴミや物を捨てるということが億劫になり、不要なものまで溜め込んでしまい、ゴミ屋敷となってしまう例も見られます。
また、セルフネグレクト状態にある高齢者の方は、衛生面だけではなく、住環境についても配慮が行き届かなくなります。
例えば、住居の窓ガラスが割れたまま放置されている、壊れそうな老朽化した家屋に住んでいる、台所・風呂場・トイレ等が壊れたままであるなどが見られます。
セルフネグレクトが進むと、食事を取らなくなったり、病院に行かなくなったり、自身の健康状態の悪化に気づかない場合が多く、その結果孤独死になる方が近年多く見られ、深刻な問題となっています。
セルフネグレクトの特徴
セルフネグレクトは若者にも発症することはありますが、高齢化社会の影響もあり、圧倒的に高齢者に多く見られる症例です。
ここ20年あまりの間に独居老人は10倍まで増加しており、孤独死した人の約71%が65歳以上の高齢者となっています。
しかし、孤独死の全体の2割近くが40~50代であり、孤独死は高齢者だけの問題ではなくなってきているのが現状です。
離れて暮らす家族や親族を孤独死から守るには、セルフネグレクトに陥らないように生活を見守ることが重要です。
セルフネグレクトの特徴としての生活の変化に以下の4つの点が挙げられます。
- 個人衛生の悪化
- 健康行動の不足
- 環境衛生の悪化
- 不十分な住環境の整備
以下では、それぞれの項目について詳しく説明していきます。
個人衛生の悪化
入浴をしない、顔を洗わないなど、身体を清潔に保つための行動を長期間していないことや、爪を切らない、髪の毛やひげなどを切らずに伸び放題になっているなど、日常生活を送る中で通常の人であれば行う行為がなされていない状態のことを指します。
身体を清潔に保つ行動が著しく減ってしまうため、身体に汚れや垢が付着し、身体から悪臭がすることも少なくありません。
健康行動の不足
発熱や風邪、もしくは糖尿病などの持病を持っていながら、通院を中断したり、必要な薬を飲まなかったり、自らの病気に対して治療やケアを受けないことをいいます。
糖尿病や高血圧を患っている人は、日常生活で食事などのコントロールが必要になりますが、そういった疾患に対して不適切な食事をするなど、治療の上で必要な注意を守らない状態のことも指します。
また、受ける資格のある福祉や介護保険などの必要なサービスを拒否することや、申請しない状態も健康行動の不足として挙げられます。
環境衛生の悪化
部屋の片付けや掃除を行わないだけではなく、ゴミを捨てない(捨てられない)、物をため込んでしまうことで、住居が極端に不衛生になってしまう状態です。
食べ物やゴミが放置されることによって、ネズミやゴキブリなどの害虫が発生したり、近隣住民にまでわかってしまうような悪臭が発生することもあります。
また、複数の動物を飼っている状態で、その動物たちの世話や管理を行わなくなり、動物のフンや餌などが部屋に散乱し、住居の衛生がさらに悪化していくケースもあります。
いわゆるゴミ屋敷の状態に陥ってしまうと、影響が出るのは本人の家のみではとどまらず、近隣住民の住宅にも影響を及ぼすケースがほとんどです。
ゴミ屋敷で発生した害虫や小動物、また小動物に付くノミやダニなどは、近隣の家にも移動してしまい、近隣住民の悩みのタネとなっています。
不十分な住環境の整備
主に「環境衛生の悪化」とセットで現れることが多く、住居の窓ガラスが割れていたり、壁に穴が開いていたりしても、修理をせずに放っておくことなどを指します。
家屋が傾いていたり、塀が崩壊しそうになったりする家に住み続けることで、落下物や倒壊で怪我をする可能性もあり、自身の身体を傷つけるリスクも高まってしまいます。
経済的な問題から家屋を修理できないこともあれば、本人が家屋の劣化に危険を感じず、関心をもたないためにそのままになっていることもあります。
劣化した住居に害虫や小動物が侵入して住みつくことで、さらに「環境衛生の悪化」が深刻になるので注意が必要です。
セルフネグレクトが起こりやすい状況(起こる原因)
セルフネグレクトは病名ではなく、状態もしくは人の一部の行為を指しています。
セルフネグレクトが起こる原因はまだ明確にわかっていません。
しかし、セルフネグレクトが起こりやすい原因として以下6つが挙げられています。
- 精神・心理的な問題
- ライフ・イベント
- プライドが高い、あるいは遠慮・気がね
- 壮年期の引きこもりからの移行
- 人間関係のトラブル
- 経済的問題
必ずしも上記の状況がセルフネグレクトを引き起こすというわけでもなく、因果関係もまだ証明されていません。
また、セルフネグレクトの人がかかっている病気として最も多かったのは、「循環器系疾患」が 84.0%で、そのうち「高血圧」が 51.6%、「糖尿病」が25.2%であったと報告されています。
1)精神・心理的な問題
精神的な病気を抱えている人は、自分で自身の病状が悪化していくことへの自覚が低く、生命にかかわる状況にあっても客観的に判断できないことがあります。
そのため、自分から他人へSOSを出せないことが多く、特に内科的な病気を合併している場合は、生命に関わり孤独死に至ることもあります。
また、精神的な病気を抱えている人は、不安や恐怖から部屋に物をため込み、他人との接触を避けるためのガードとして出入口付近に物をたくさん置いてしまう場合もあります。
精神的な病気の症状で「妄想」があると、外部からの見えない電波を遮断するという目的で、電気製品や壁・天井などをアルミ箔等で覆ったりする行為も見られます。
2)ライフ・イベント
家族の死や、自身の病気、リストラなどの人生のショックな出来事により、生きる意欲が失われ、セルフネグレクトに陥ることは少なくありません。
これまでの研究などで「配偶者の死」が最もストレス度が高いとされており、特に男性は妻を亡くすことで、そうでない男性と比べて寿命が短くなることが指摘されています。
また、日常生活に支障をきたすような病気や障害、それに伴う痛みなどによって、生活の意欲が低下して、外出や友人との交流などが乏しくなり、孤立することも少なくありません。
3)プライドが高い、あるいは遠慮・気がね
「人の世話になりたくない」というプライドから、健康のための医療・福祉や介護サービスを勧めても、医療機関の受診やサービスを受けることを拒否する高齢者もいます。
最近では、娘や息子などの最も身近で頼りにしてもよい肉親に対しても、遠慮をして助けを求めないことも少なくありません。
遠慮や気がねでサービスを拒否する場合、「今のところは大丈夫」「一人で何とかやっている」などの言葉で支援者を安心させることもありますが、実際には支援が必要な状態であることも多く、「大丈夫」という柔らかな拒否の言葉に惑わされず、その人に本当に必要な支援を見極めることが重要です。
4)壮年期の引きこもりからの移行
近年、若者のも引きこもりや SNEP(20 ~ 59 歳の無職で、知人や友人との交流がなく、未婚の人のこと)などが問題となっています。
上記にあげられるような人々は、仕事がなく、人との交流もないが、現在は自分自身の力でインターネットなどを通して情報にアクセスし、助けを求めることができています。
しかしそのまま年をとって高齢者になると、スマホやパソコンなどの電子機器の進歩についていけず、自分で情報にアクセスしたり、外部に助けを求めることができなくなる可能性も考えられます。
またこれらの人々は、現在はご両親の存在により日常生活を維持できていますが、ご両親が亡くなってしまった後は生活能力が乏しく、セルフネグレクトに陥る可能性が高くなります。
5)人間関係のトラブル
家族や近隣住民とのトラブルを抱えてしまったり、人間関係での怒りや不満から他人を信頼できなくなり、人ではなく物に執着し、結果的にゴミ屋敷になってしまうケースもあります。
そうなってしまうと、支援者のことも簡単には信用してもらえないため、信頼関係を築き上げるのにかなりの時間を要します。
6)経済的問題
経済的に困窮していれば、自己負担が発生するような通院、介護や福祉のサービスなどを受けることはできません。
しかし周囲の人間に経済的に困窮していることを知られたくないというプライドから、セルフネグレクトに陥ることもあります。
生活保護など金銭的な支援を受けるように手続きを進めようとしても、実は「老後の資金」として貯金を所有している場合も多く、生活保護も申請できません。
また、そのような状態から本人を説得して生活を改善させるために金銭を使わせることも、なかなか難しいのが現状です。
セルフネグレクトは、対応・支援が遅れることが多い
セルフネグレクトは現在少しずつ社会問題として注目されるようになってきましたが、実際の現場対応・支援となると、遅れてしまっているのが現実です。
理由として主に挙げられるのは、高齢者虐待防止法の定義から除外されていることや生命の尊重のためであっても、個人の生活に強制的に他人が介入することができない、という点です。
また、セルフネグレクトと自律やプライバシーの権利を区別することは、家族、友人、医療従事者にとっても極めて難しい問題で、本人は納得の上でその生活や状態を選択している可能性もあります。
こちらが良かれと思って支援の手を差し伸べようと思ってしたことでも、「本人が介入を拒否すれば対応できない」のが現状です。
それはたとえ医療従事者や介護専門職の方から見て、明らかに支援が必要と判断したとしても、本人から拒否されてしまうとやはり介入はできません。
本人が支援の介入を拒否しているケースでは、「どの範囲まで支援していくのか」、「権利擁護が逆に権利侵害になりはしないか」ということに支援者は悩み、同時には支援者自身の価値観を相手に押し付けていないかと悩まれることもあります。
セルフネグレクトは孤独死につながりやすい
セルフネグレクトに陥ってしまうと、自分自身で周囲にSOSを発信することが難しく、その結果、孤独死に繋がってしまうことが多くあります。
セルフネグレクトの現れ方にも様々な形がありますが、その中でも「近隣住民や周囲の人間との関係を絶っている」ことと、「介護や福祉を受けることを拒否する」ことが2つ重なると、孤独死に繋がる可能性がより高くなってしまいます。
理由としては、ゴミ屋敷などは目に見えて状況の悪化がわかるため、行政や近隣住民、家族なども状況を改善するために行動に移りやすいですが、近隣住民などと関係性を絶ってしまっていると、本人の身体に問題が起きても発見が遅れてしまう可能性が高くなるためです。
近年、ゴミ屋敷や孤独死現場の整理・特殊清掃が増えている
弊社では特殊清掃なども承っていますが、特殊清掃のほとんどがセルフネグレクトで孤独死をされた方の現場です。
死臭は強烈な独特の臭気で一度ついてしまうとなかなか取れず、取り除くには大変な作業時間とそれに伴った費用を要します。
死臭の強烈な臭いも、臭気の根源を取り去り、専用の機材を使用することで、解消できることがほとんどですので、なるべく早く業者に相談されることがおすすめです。
下記では、大阪の遺品整理業者「アーチグリーン」で行った特殊清掃の実例をいくつかご紹介します。
孤独死されたお父様の一軒家の遺品整理(関西・大阪)
こちらのご依頼主様は、遺品整理・特殊清掃を依頼する前に悩まれていた点は、家屋内の死臭を取り除くことができるのかどうかということでした。
ご依頼主のA様は、最初は別の遺品整理業者にも見積りを取っておられました。その金額が想像より高く、適正料金なのかを知りたいために、当社にご連絡してくださいました。
ご依頼主様のご要望は以下の内容でした。
- 死臭を除去したい
- 近所迷惑になるので早めに解決したい
- 大事な物が出てきたときに取り置きして欲しい
- 任せても安心出来るよう、事前に説明をしっかりして欲しい
- 当日現場に行けるか分からないが、それでも対応して欲しい
- 作業中、近所の迷惑にならないようにして欲しい
A様とは、遠隔でのやり取りが続きましたが、「非常にマメに連絡を取ってくれ、見積もり段階での説明を丁寧にしてくれた」のが決め手となって、最終的に当社にご依頼いただきました。
物量 | 6トン分 |
間取り | 4LDK |
人員 | 1日目3人、2日目4人 |
作業時間 | 2日 計15時間 |
料金 | 税別580,000円 |
ご依頼いただいた作業 | 孤独死,、特殊清掃,、遺品整理 |
孤独死されたお父様の分譲マンションの遺品整理(千葉県習志野市)
ご依頼主様は、遺品整理を依頼する前に、急ぎでの作業が必要だったのですが、仕事都合により立会いができないことや、ファミリー世帯が多く住むマンションなので、他の居住者に迷惑をかけたくないことを気にされておりました。
多くのご依頼者様は、普段のお仕事も忙しく、なかなか立ち会うことができないのが現状です。
ご依頼主様のご要望は以下の内容でした。
- 特に必要な家財は無いので、全て撤去して欲しい
- 売却先を探すためにも、早く空っぽにしたい
- 未払いの料金請求書や、解約すべき契約書がないか探して欲しい
- ご依頼主様の立会いなしで作業を行って欲しい
- 物件管理会社に事前に作業の説明を行って欲しい
- 人の出入りが多い時間は搬出作業を控えて欲しい。あまり大掛かりな作業はして欲しくない
こういった孤独死のケースでは相続手続きにおける重要な資料が室内に残されている場合があります。 例えば、物件売買契約書や、通帳、ローン明細などです。
疎遠でなくても離れて暮らしてる場合、ご家族もどこに何があるか把握できてないことが多いです。
今回の場合は、金銭や契約書などの最も重要な物は、既に依頼主様が保管されてましたが、 片付け作業をする過程で新たに通帳が見つかりました。
物量 | 6トン分 |
間取り | 3LDK |
人員 | 3人 |
作業時間 | 2日 計12時間 |
料金 | 税別365,000円 |
ご依頼いただいた作業 | 孤独死,、親の家の片付け、遺品整理 |
セルフネグレクトからの脱出・対策方法
自覚しづらく、周囲にもなかなか気づかれないことが多いセルフネグレクトですが、改善・脱却するためにはどのような対策が必要なのでしょうか。
セルフネグレクトから脱出するために、それぞれの視点での対策を見ていきましょう。
本人の立場として
セルフネグレクトは自分の状態を気づけない人が多く、自身がセルフネグレクトになっていることを自覚していないことがほとんどです。
まずは「自分で自分の世話ができていない」ということに気付き、「自分がセルフネグレクトである」自覚を持つことで、自身の置かれている状況を把握し、状況を改善するための行動に移っていくことができます。
体調不良、不眠気味、食欲不振、部屋が汚い、などセルフネグレクトに陥る前には必ずなにかしらの兆候があります。
自分は違うと思っている方でも、セルフネグレクトかどうか自己診断できるチェック項目を確認してみるとよいでしょう。
セルフネグレクトの状態にある人は、周囲に頼る人がおらず孤独になりがちですが、セルフネグレクトの状態で孤独になってしまうと、状態は悪化するばかりです。
そのため一人でどうしようもない、と感じたらひとまず友達や家族に相談してみましょう。
友達や家族に相談するのが難しい場合は、行政や自治体の窓口などでもよいでしょう。
相談するだけでも気分が晴れることもありますし、自分の状況を口に出して説明することで、自分の現状を理解することにもつながります。
セルフネグレクトは自分一人の力では解決が難しいため、まずは誰かに相談し周囲から「孤立しない」ことが重要です。
家族の立場として
セルフネグレクトは、友人や家族などの周囲の人との連絡を取らなくなり、孤立した状態に陥りがちです。
先ほどもお伝えしましたが、セルフネグレクトは自身ひとりで脱出、解決することは極めて困難で、周囲のサポートが必須です。
家族や友人などで心配な方がいる場合は、こまめに連絡をとるようにしましょう。
話を聞いてあげるだけでも相手は気分転換になりますし、相手の現状を確認したり、会話の内容から健康状態を察したりすることもできます。
また、セルフネグレクトの状態のひとつとして「部屋の片づけができない・掃除をしたくない」というものがあります。
部屋が汚いと、気持ちが塞ぎ込んでしまいがちになり、生活リズムの乱れや、体調不良を招くなど、悪いことばかりです。
清潔で心身共に健康的な生活を送るためには「部屋を正常な状態に整える」ことがポイントになります。
ご自身だけで片付けが難しそうな場合は、「ごみ屋敷」や「生前整理」に対応してくれる業者を利用するのも方法のひとつです。
セルフネグレクトの原因が病気の場合は、その病気に応じた専門の病院での治療を優先させましょう。精神科や心療内科では、カウンセラーと面談することもできます。
自分で判断が難しい場合は、友達や家族、ケアマネジャーや自治体職員に相談できるため、一人で抱え込まないようにしましょう。
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この記事を書いた人
東 藍
【生前整理診断士】
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